キャリア教育NPO法人 Grow & Leap

キャリアアンカーと計画的偶発性理論の関係を考えてみよう

はじめまして。中高生サポーターの亀田と申します。これまで1期生からMy Story Project(愛称「MSP」)を拝見し、2期生から中高生サポーターとして活動を始めました。特に3期MSPは東京から名古屋の現地まで赴き、熱量の高い中高生の発表を聞いて、私もGrow&Leap(愛称「GL」)のお力になりたいと思いまして、微力ながら記事を書かせていただくことになりました。

私は普段は一般企業に勤めていますが、2023年に国家資格キャリアコンサルタントの資格を取得し、個人でキャリア支援のイベントを企画、運営しています。これまで学んだことを活かして、学術面からMSPを考えたいと思います。

自分のキャリアをどう考えたらいい?
キャリアデザインにおける2つの理論

皆さんは将来の夢や自分がやりたいこと、なりたい姿はイメージ出来ていますか?MSPのプログラムはキャリア面談を進めて行く中で自己探索の楽しさを感じてもらい、あなたにしか描くことのできない将来を描き、勇気をもってアクションを起こしてもらう個性教育です。キャリアデザインとは、まさにMSPを通して自分が将来どんな人になりたいのか、どんな自分でありたいのかをイメージして、働くことだけではなくて、生き方を主体的に考えて実現していくことだと考えます

しかし、キャリアデザインを考えていく中で、「将来やりたいことがいっぱいありすぎて、何をすれば良いか決まらない」という考えや、「まだまだ知らない世界がいっぱいあるので、いま将来を決めてしまってよいのかな・・・」といった不安な気持ちになることはないでしょうか。こういった考えは決して悪いことではありません。皆さん自身が大切にしている価値観の中でキャリアをデザインしていくものですので、人生の中で関わる人の影響やちょっとした出来事で将来の夢ややりたいことが変わっていくことは誰しもあることです

そこで、MSPが大切にしている個人の価値観とキャリアデザイン(キャリアアンカー)、偶然の出来事によってキャリアデザインを描き続けること(計画的偶発性理論)について考えてみたいと思います。

 

自分のキャリアの核「キャリアアンカー」

まずはキャリアアンカーについて簡単にご紹介します。キャリアアンカーは、個人が自身のキャリアや働き方を選択する際に、どうしても譲れない「価値観」や「欲求」「コアコンピタンス(能力)」を指します。この概念はマサチューセッツ工科大学名誉教授のエドガー・H. シャインによって提唱されました。キャリアアンカーは、生涯にわたり自分の働き方の軸となるものであり、瞬間的な好みやライフステージによって変化するものではなく、自身にとっての「核」に該当します。早い段階で理解することは、満足度の高いキャリアや働き方を選択する上で有利です。キャリアアンカーは8つの分類に分けられます。以下に具体的な分類と適職を示します。
※参照:GLOBIS CAREER NOTE,https://mba.globis.ac.jp/careernote/1142.html

 

偶発的な出来事をものにする?
「計画的偶発性理論」

次に計画的偶発性理論について簡潔にご紹介します。計画的偶発性理論(Planned Happenstance Theory)は、キャリア形成において偶発的な出来事が重要な役割を果たすとする理論です。個人のキャリアの8割は、予測できない偶然の出来事によって決まるとされています。計画的偶発性理論を実践するためには、以下の5つの行動特性が重要です。

  – 好奇心(Curiosity): 新しいことに興味を持ち続ける。
  – 持続性(Persistence): 失敗してもあきらめずに努力する。
  – 楽観性(Optimism): 何事もポジティブに考える。
  – 柔軟性(Flexibility): こだわりすぎずに柔軟な姿勢をとる。
  – 冒険心(Risk Taking): 結果がわからなくても挑戦する。

※参照:RGF Professional Recruitment https://www.rgf-professional.jp/insights/2020-06-what-is-planned-happenstance-theory-how-to-create-a-career-contingency-career-plan

 

キャリアアンカーと計画的偶発性理論を融合してみよう

ここまでキャリアアンカーと計画的偶発性理論をご紹介しました。キャリアアンカーは個人の価値観や適性に基づいてキャリアを選択する理論です。一方で、計画的偶発性理論は偶然の出来事からチャンスを掴むための考え方を示しています。これらの理論は一見、対極にあるように見えますが、私は両方の理論が密接に関係していて、良い所を取り入れることでより良いキャリアデザインに繋がるのではないかと考えます。

キャリアアンカーは働き方を選択する上で譲れない価値観を錨のように拠り所としています。しかし、ライフステージの変化や新しい経験や学習、環境の変化によっては考え方やアンカーの深さ(度合い)に多少の変化があるのではないかと思います。私の友人で以前は仕事でたくさん成果を出しているタイプの方がいました。しかし、出産を機に仕事も大切にしていますが、家族との時間も大切にする働き方をするようになりました。ライフステージの変化に対して、個人の価値観を大切にしつつ、チャンスを見逃さずに柔軟に行動をすることはまさに計画的偶発性理論の考え方であると思います。

また、キャリアデザインの視点としてWill(やりたいこと)、Can(自分にできること)、Must(自分の役割)があります。やりたいことはたとえ失敗しても諦めずに努力すること(Willと持続性)や、自分にできることをポジティブに取り組み続けること(Canと楽観性)、自分の役割を理解して結果が分からなくても挑戦し続けること(Mustと冒険心)で、新しいキャリアが切り拓けるのではないでしょうか。これらの考え方はキャリアアンカーと計画的偶発性理論を融合して考えていくことでより良いキャリアデザインになると考えます。

 

私のキャリアと偶発性

私のこれまでのキャリアを振り返った時に、偶発的な出来事によってキャリアを描き続けてきたと思うことがあります。私が小学生の頃、将来の夢は学校の先生(国語の先生)と卒業文集に書きました。大学は文学部に行き、国語の先生の免許を取得しました。教育実習で母校の中学生と接した時は中学生の成長に携わる機会を頂き、先生になりたいと思いましたが、一方で当時の就職活動の際に出会った人事担当者の人柄に触れて、今の会社に就職しました。

その後、経営の勉強が必要だと感じて、社会人として働きながら大学院に入学。大学院では、友人たちとキャリア支援のイベントを企画、実行しました。その過程で、私は人の成長に携わりたいと改めて考えるようになり、国家資格キャリアコンサルタントを取得しました。今の会社に入社して15年あまり経ちますが、人の成長に関する想いが強くなり、今後は組織開発コンサルタントの仕事へ転職することにしました。

幼い頃から抱いてきた教育への関心や大学生の頃の成長に関わりたいという想いは、私のキャリアアンカーとなっている大事なものなのだと思います。一方で、大人になってからの出会いやキャリア支援の企画・実行、インターネットで見つけたGLの活動など、私自身が好奇心や冒険心を発揮しながら、偶発的な出来事にチャレンジしてきたことが現在の私のキャリアデザインに繋がっていると感じています

キャリアアンカーを分かっていることと同時に、やはり偶発性とそれを自分のものにする姿勢と行動が必要なのです。

さいごに

MSPは個性教育を通して、Will、Can、Mustの視点からキャリアデザインが出来る素敵なプログラムだと思います。またこれらの考え方の土台の上に好奇心を持って、柔軟な考え方でポジティブにチャレンジする気持ちを持って行動していくことで、キャリアが変化していくと考えます。また変化が多く先が見通せない時代だからこそ、キャリアをデザインし続けることが大切です。GLはMSPの期間の中で様々なイベントがあります。中高生だけではなく、大学生のメンターや社会人の中高生サポーター、GLのキャリア教育コーディネーターと触れ合う中で、いろいろな価値観に触れる事ができます。また、MSP終了後もネットワークが繋がっていくことで新たな刺激を受けることでキャリアデザインをし続けることになると考えます。

私もMSP生の刺激を受けて、GLの活動を通して新たなキャリアをデザインすることになりました。これからも中高生に寄り添ってキャリアデザインのサポートをしていきますので、よろしくお願いします。

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