今回は、My Story Project(愛称「MSP」)でメンターとして、1期MSPから活躍しているよしのさんに、活動の思いやよしのさんから見た中高生の姿について、お話を伺いました。
学校ではない場所、
マンツーマンだからこそできること
ーはじめに、簡単に自己紹介をお願いします。
よしのです。大学4年生です。卒業して、来年の4月からは名古屋市の小学校教員として働く予定です。よろしくお願いします。
ーGLではどのような活動をしていますか?
MSPのメンターをしています。あとは、アフターMSPの設計もしていますね。
ーよしのさんは、GLに関わり始めて4年くらいですよね。GLのどのようなところに魅力を感じていますか?
GL自体の魅力として、個人的には、人の内面にしっかり向き合って、内面的な成長を本気でサポートするというか。周りからどう見えるかということよりも、内面の成長を重視して、そこに対して全力で取り組んでいるところが魅力かなと思います。
ーMSPとしての魅力はどんなところにありますか?
受講が基本的にマンツーマンで、一回の受講が90分間あるんですけど、その90分丸々、その子の考えや感情を引き出すことがメインになるんですね。そういう機会ってなかなかないと思っていて、学校の先生とかもやりたい気持ちはめちゃくちゃあるんですけど、学級に30人とかいる中で、一人にそんなに時間をかけられない状況があって、そういうところが魅力的なところかなと思っています。
「隣で一緒に受け止めてくれる存在」でありたい
ーこれまで何人のMSP生のメンターをしてきましたか?
1期MSPからメンターをやらせていただいているので、今担当している子も含めて、6人です。年齢的には中2から高1で、MSP生の中では、年齢としては幼い子たちが多かったですね。
ーおお、ベテランですね。MSP生と接する時に、どんなことを大事にしていますか?
GLの個性の定義は「感じたこと、考えたこと、そのもの」。その感じたことや考えたことを本人が逐一自覚することってそんなにないじゃないですか、「今、私こんなこと考えてるわ、感じてるわ」みたいな。(笑)
それを言葉にしてMSP生自身が「あ、私ってこんなこと感じてたんだ、考えてたんだ」って認めていくこと。つまりは、そういう思考や感情が存在していること自体を認めることと、それを受け止める、受け入れることもあるかなと思っています。自分は、この状況を見てこういうことを感じていたんだ、それが自分らしいってことなんだな、みたいなところまで受け止めるというのは、一人では難しいのかなと思っていて、誰かが隣にいてくれて「そうだったんだね、そう感じたんだね」って受け止めてくれて、初めて安心できるところがあると思うんです。
そういう感じたことや考えたことを本人がまず認識すること、その次に一緒に受け止めることっていうことを意識しています。
ー認識のステップと受け止めるステップ、段階がある感じなんですか?
場合によりますね。MSP生自身が簡単に受け止められることもあれば、受け止めるのに時間がかかる出来事もあるのかなと思うので、ものによるって感じです。その時の様子を見ながら、無理やり受け止めさせるのではなくて、何回か同じような感情や考えが出てきたときに、本人が前もこういう感じのこと出てきたねってなるようにできたらいいなと思っています。
ーなるほど。実際に感じた場面とか、もう少し具体的に教えてもらえたりしますか?
今は自己分析をやっていて、特に感じたことや考えたことを話してもらうことが多いんですけど、受講の中でMSP生が話してくれたことを全部私が文字起こしをしているんですね。それを一緒に見てみて、自分が話したことについてどう思うか訊いたときに、過去に同じようなことをしていたりだとか、同じような考えをしていたりしたところを、本人が「私はこういう風に考えていたんだって思いました」って感じで、言ってくれることが多いですね。
一緒にやっていたことを
自分一人でできるようになる
ーMSP生と週に一度くらいのペースで、約半年にわたって定期的に会うんですよね。スパンとしては、短くも長い期間を共にしますよね。何か変化を感じますか?
そうですね。1つは、言葉数が多くなることがありますね。最初の頃は、何か質問したときも、一問一答みたいな感じの状況が多いですが、だんだんと、ひとつの質問に対しても、色んな角度から返してくるようになったりだとか、私が言った意見に対して反対する時、「あ、そうじゃなくて、こうだと思います」って感じで言ってくれる時とかは、関係性ができてきたのかなと思ったりしますね。大人の言うこと…大人だと思われているのかはちょっとわからないですけど(笑)、年上の人に対して反対意見を述べることってあんまり簡単なことじゃないと思うんですけど、それくらい気軽に話せる相手になれてるのかなって感じます。
もう1つは、最初の頃から、MSP生が話してくれた事に対して、もっと具体的に話してもらえるように、色んな質問をするんですね。それが自分の頭の中でできるようになっているのかなっていう印象はありますね。何かひとつ話すときに、具体例を出して話してくれたり、一個思いついた考えをさらに深めて「それはなんでだろう?」とか、別のことと比べて考えてみたりとか、そういう力がちょっとずつついているのかなと感じますね。
ー今まではやりとりでやっていたことが自分の中でもできるようになっているってことですよね。
そうですね。例えば、「時を掴もう」っていうテーマのCS(*1)を伝えたとして、感想の時に、最初のうちはCSの中で言われていることを復唱してくれることが多いんですよね。でも、受講を始めてしばらくすると、「なんで時を掴むことが大事なのか」ということをCSで伝えていたこと以上のことや自分にとってなぜ大事なのかっていうことで、自分に落とし込んで話してくれたりとか、自分は今どういう時を掴む必要があるかっこととか、自分とCSを照らし合わせて考えてくれたりすることもあるんです。
大事なことは
「自分のこと」として捉えられるか
ーよしのさんはCSをその子その子に合わせてカスタマイズもしていると聞きました。どのような思いでやっていらっしゃるんですか?
CSで伝えている内容は当たり前のことが多くて、彼らが十何年生活してきた中で、色んな人から既に言われたことだとは思うんですよね。「目的を設定することが大事だ」とか、「前もって準備することが大事だ」とか、何回も言われてきたようなことだと思うんですけど、でもやっぱり大事なことなんですよね。じゃあ、それをどういう風に伝えたら、その大切さを実感して、自分の生活で本当に実践することができるかってことを考えた時に、誰にでも同じ伝え方をしていたら、しっくりこないと思うんです。その人によって生きている人生が全然違うから。
だから、その子の生活に合わせた具体例を用いたりするんです。例えば、部活でバレーボールをやっていて、それを一生懸命やっている子だったら、具体例をバレーボールにしてみたり、ビジネスにすごく興味があって起業したいみたいなことを言ってる子だったら、ビジネスに関連する話題を取り上げてそれを具体例にしてみたりだとか。
あとは、問いを多く立てるようにしています。毎回CSを伝えるときに最初に、こうやって言われたから大事だ!ではなくて、自分の中でなぜ大事なのか、自分がしっくりくる理由を自分で持てるようにこの時間考えながら聞くようにしてねってことを伝えているんです。そのために、こっちがたくさん話すというよりは、質問をしながら伝えるようにしています。
ーそうなんですね。1期の時からカスタマイズをしていたというよりは、2期、3期と重ねてくる中でそういう風にやってこられたのかなと思うんですが、実際にその子に合わせた形でやってみるようにしたら、変化はありましたか?
明確に違っていますね。普通に伝えていた時は「そうなんだ、大事なんだってことが分かりました」ってなっていたんですけど、カスタマイズして伝えてみると、MSP生自身にとって「私の特性上こうだから、時を掴むことが重要だと思った」「自分は人生をこういう風に生きたいと考えるから、それが大事だと思った」って感じで、自分のこととしてすごく捉えてくれるようになったことが変わったのかなと思います。
ーそれはすごいですね。もう少し具体的なエピソードを伺ってもいいですか?
例えば、「変化してこそ、希望がある」っていうCSを伝えたんです。CSの中では「時代が変化しているから、自分も変化することが必要だ」って話をしているんですけど、その子はCSを聞きながら、植物と人間の違いを考えていたらしくて。(笑) 植物は生命活動をすることで綺麗になるけど、人間は生命活動をしているだけでは退化をしていくんじゃないかとか考えながら、「人間は自分の意志で行動できるからこそ変化って大事かも」って答えに行きついたみたいなんです。時代が変化しているというのもあるけど、「人間だからこそ、変化することが重要なんじゃないか」って。
あともうひとつ、「自分自身が変化することが好きだから」。自分を喜ばせるためにも、変化することが大事なんじゃないかって感じたみたいです。それで、具体的にどんな変化をしたいのかってことも自分で考えてくれていて、「自分の精神年齢を上げたい」って答えてくれていました。
自分の良さだ!
と本人が認められることが嬉しい
ーMSPをやりながら「嬉しいな!」と感じる瞬間はどのような時ですか?
MSP生本人が自分の感じたことや考えたことに気づいて、それが自分の良さなんだなって本人が認められている時に嬉しいなって感じますね。そういう発言は結構多くて、受講の最後に振り返りをする中で、「私ってこういうこと考えていたんだって思った」「こういうところが自分のいいところだなって思った」って言ってくれるんですよね。
ーそれはやっぱり、言葉にしているからなんですかね?
言葉にしているからだと思います。作文とかでも、あるあるなのが事実だけを書くみたいなことが多いと思うんですよね。「これがありました、あれがありました、面白かった」って感じで。でもそれを具体的に聴いてみると、色んな感情が出てきたり、その時に関わった人が登場してきてその人に対してこう思ったとか、自分はこう考えていたとか、そういうのも出てくるんです。あと、感情や思考だけじゃなくて、その子の具体的な行動からもその子の考え方が見えてくるので、実際にその子がした行動とかも訊くんです。
そういうことがたくさん出てきた時に、本人が自覚できていなかった部分が言葉になって、文字になって見えるから、そう思うかなって思います。
ー「面白い」ひとつとっても、色んな意味が含まれていますもんね。
最初は訊かれすぎて慣れていない、みたいな子もいますね。こっちが訊きすぎて。(笑) そんなにこのことについて訊かれるんだって感じで。 でも、だんだん慣れてきて話してくれるようになりますね。
ー逆に、難しいこととか、悩むこともあるんですか?
2つありますね。1つは成長を数値化できないこと。しかも、成長というのも、形式的にやりたいことをとりあえず作ることがゴールではないので、まずは本人が自分の「個性(感じたこと、考えたこと)」を認めて、過去から繋がる自分の未来を創造するようになることがゴールなので、目に見えた成果があんまりないんです。私自身がうまくできているのか、できていないのかっていうことの評価が数字でできないことが難しいなと思いますね。
もう1つは、アフターMSPでも課題になっているんですけど、MSP生が自分の成長サイクルを自分で回せるようになるところですね。MSPの受講の中でも、毎回目標を設定して、それを次の受講までに振り返るってことをしてはいるんですけど、なかなかそれが本人のものになるようにサポートがしきれていない感じがしますね。
将来について考えることを楽しめたら
ー冒頭で、アフターMSPの設計も担っていると伺いましたが、どのようなことを実際にしていますか?
数か月に一度の面談をしています。内容としては、最近の生活について聴くことと、将来についてブラッシュアップをしています。MSPで考えてきたことを振り返りながら、今は将来についてどう考えているかってことを一緒に話しますね。
あと、MSP生限定のポータルサイトを作っていて、面談だけ関わっていると感覚を忘れちゃうってこともありますし、MSP生みんなが仲間というか、一緒に自分の将来を築いていく、生きていく仲間であるという感覚を持てるように、ポータルサイトの運営を今、頑張っています。
ーポータルサイトはどういった内容があるんですか?
GLで開催するイベントの情報やMSPで実施するキャリアリサーチ(社会人の方などへのインタビュー)に参加することができたりします。
あとは、これからやろうとしていることとしては、GLに関わってくださっている方の自己紹介を載せたり、大学生たちが全国各地の色んな大学に通っているので、せっかくなので大学紹介を撮ってもらって載せようかなとか、社会人の方に職業インタビューをさせてもらって、その動画を載せさせてもらえたら嬉しいなーとか考えています。
ーこれから充実していきそうですね。全体を通して大事にしているところや構想していくときに意識していることとかありますか?
将来について考えることを楽しめたらいいなって考えています。MSPをやっている時は、みんなも一緒にやっているし、毎週面談があるっていうので、将来について考えようっていう意識が高かったり、常に週に一度一緒にやってくれる人がいるので、楽しめると思うんですよね。でも、MSPが終わっちゃうと、テストが忙しすぎるとか、将来について考える時間がないし、精神的にも余裕がないですとか、目先の大学進学が切羽詰まってきて将来について考えることが楽しいってよりも義務感になってきちゃう部分もあるのかなと思うんです。だから、面談では、自分の人生について考えることが楽しいっていう感覚が持てるように心がけています。
ーアフターMSPとして、中高生と接しながら、どのようなことを感じていますか?
やっぱり、MSPの時の感覚は忘れているなって感じはします、正直に言うと。(笑)
でもそれは仕方ないというか、日常がそういう環境ではないので、どうしても一人でやることは難しいことなんだと思うんです。だからこそ、アフターMSPの重要性はすごく感じますね。
他者貢献には、
自分自身を認める経験がすごく重要
ーそろそろ終わりの時間も来ているので、締めくくろうと思うのですが、1期と現在で、MSPや中高生に向かう視点や想いは変わりましたか?
具体的な将来がかっちり決まることが重要で、それを早くしないといけないような思いがありました。でも、大人になって社会で生きるっていうのは、自分のためだけでなく、他の人や社会のためにもなることを、心から自分の喜びとしてできるかが大事になってくると思うんです。
それを考えた時に、自分自身のことを認める経験がすごく重要だなと考えています。もともと私は小学生と関わることも多いので、中高生は大人だなと感じていました。小学生と比べたら、当たり前ですけど、大人なんですよね。(笑) 考え方とか、喋る内容も、小学生とは全然違うので。でも、話してみると、まだ子どもというか、まだ成長途中なんだなってことはすごく感じます。自分のことを認めてもらいたいって気持ちもすごくあるし、自分のことを認めたい、分かりたいっていう気持ちもすごく持っている。だから、その子が自分のことを好きになれるように、認められるようにしたいなって思います。
それから、伴走する人がその子を認めてあげるっていう言い方が合っているのかわからないけど、一緒に受け止めてあげる時に初めて、「私も誰かのことを受け止めたい」「誰かのためにやってみたい」っていう気持ちが、自分が受け止められる経験を通して生じるんだなって最近、MSP生と話しながらすごく思いました。まだまだ成長途中で、自分への投資がすごく大切な時期なのかなって思うようになりました。
無理やり大人が社会に出た時のことを考えさせるっていうよりは、まずは自分のことをしっかり考えさせてあげる時間を持ってあげることが重要なのかなって思います。
ー本当にそうですね。今日は色々なお話を聞かせてくださって、ありがとうございます。最後に、インタビューを終えて何か感じたことや考えたことがあったら教えてください。
ずっと同じようなことを話していた気がします。質問は違っても、同じような話をしている感じがしたんですよ。だから私が中高生に関わるスタンスは「その子自身が自分のことを受け止められるようにする」ってことをいつも意識しながら接しているんだろうなって思いました。
あと、他の人の意見も聞いてみたいなって思いました。(笑)
ーよしのさんらしいですね。また別の方にも聞いていこうと思っているので、ぜひまたそちらでご覧ください!今日はありがとうございました。
*1:CSとは、Co*Sharingの略で、毎回の受講の冒頭で実施する「テーマ設定の場」です。詳しくはこちらをご覧ください。