キャリア教育NPO法人 Grow & Leap

【メンターインタビュー】私とその子、私だからこそできること。

今回は、My Story Project(愛称「MSP」)でメンターとして、2期MSPから活躍しているゆずきさんに、活動の思いやゆずきさんから見た中高生の姿について、お話を伺いました。


GLの魅力は「人」

ー初めに、簡単に自己紹介をお願いします。
ゆずきと言います。今は大学3年生で、心理学を勉強しています。よろしくお願いします。

メンターとして活動するゆずきさん

ーGLでは、どのようなことをしていますか?
GLに関わり始めたのは、大学1年生の時からなので、3年目ぐらいなのですが、最初はボランティアスタッフとして関わり始めました。2期MSPにメンター、3期MSPはメンターとMSPの運営、Instagram広報、あと最近は起業コースにも少し携わらせてもらっています。

ー多岐にわたっていますね。どういうところにGLの魅力を感じていますか?
「人が魅力」だなと私は思ってます。中高生もそうだし、大学生もそうだし、社会人の方もたくさん関わってくださっていて、皆さんすごく温かいんです。「個性」を大事にするというGLのマインドをみんな持っていて、そこが魅力だなと思います。

ーなるほど。どういうところで特に感じますか?
今期のMSPでは、世代を超えて交流できるようなイベントを考えたりしたんですけど、そういう場でも、年齢関係なく対等にみんなが話せる感じとか、お互いに高め合おうとする雰囲気とかを対話や交流の中から感じましたね。

ーMSPの魅力はどういうところに感じますか?
「個性(感じたこと、考えたこと、そのもの)」を基盤にして、自分が自分でそのままいられることが魅力かなと思っています。学校や家庭だと、こうした方がいいんだろうなっていうこととか、色んな思いが頭の中で駆け巡って、なかなか自分の本心が言えないことも多いかなと思うんです。でもMSPの中では、素直に感じたことや考えたことをそのまま表現しながら、自分を分かっていくっていう過程があって、そこが魅力だなと思います。それから、自分をどう捉えるかによって、見える世界が変わってくるところがあると思っていて、自分のことを素敵に捉えられるところがいいところかなって思います。


大事にしていることは
「分かろうとすること」と「感謝すること」

ーMSPでは、これまで何人の中高生のメンターをしてきましたか?
2期で4人、3期で4人の8人です。

3期MSPのメンター(ゆずきさんは前列左から2番目)

ー実際に中高生と接していく時に、大事にしていることはありますか?
大きくは2つあります。
1つは「分かろうとすること」です。話を聴く時に「あ、そうなんだ」って流せることかもしれないけど、「私って本当に分かっているのかな」って一旦立ち止まって見て、もうちょっと分かろうとしてみようとすることがあります。そうすると、私が思っていたのと違う世界を見ていたりしているんです。分かろうとすることで、本当にその子のことが知れる気がするんです。
もう1つは「感謝すること」です。忘れないようにしたいなと思っている感じですが、忙しい中高生の日々の中で、毎週MSPをやりに来てくれることも、当たり前じゃないと思いますし、受講の中で「これが不安だ」とか「あれ楽しかった」とか、色んな気持ちを話してくれることがすごく貴いというか、ありがたいことだなと感じます。その気持ちを忘れないでいたいなと。

ー大事ですね。「分かろうとすること」、何かエピソードとかあるんですか?
例えば、一緒に過去の思い出を振り返っているときに、傷ついた体験を話してくれた子がいたんです。「そうなんだ」って受け止めて終わることもできますが、私の脳内でイメージしているその子の体験と本当にその子が体験したことや感じたことがちょっと違うんですよね。もう少し気持ちを聞いてみると、本当にその子が体験したことが見えてきます。ある意味では、私の思い込みで聞かないようにしていることが分かろうとしてることかなと思います。

ーMSP生と週に一度くらいのペースで、約半年にわたって定期的に会うんですよね。その半年間で、変化を感じる部分とかはありますか?
最初の頃は、世間一般的に言われているだろうこととか、こういう発言がいいよねと思うような言葉が多いなって感じます。それが自分自身の言葉で話してくれるようになることが変化かなと思いますね。

ー大人でも難しいことで、それが中高生からできるってすごいことですよね。その変化の背景や要因は何があるんでしょうか?
難しい質問ですね。MSPの環境もコンテンツも「その子が感じたこと、考えたことを大事にしたいんだ」っていうものになっているんですよね。だから、ちょっとずつちょっとずつ積み重ねて、毎週コンスタントに続けていくだけでも、抵抗感がなくなったり、新しいことに気づけたりして、そういう変化が生まれるんじゃないかなと思います。


メンターと受講生ではなく「私とその子」

ーMSPで嬉しいなと感じる瞬間はどんな時ですか?
その子がすごくイキイキと話してくれる時ですね。自分の好きなこととかについて、話してくれたり、写真を見せてくれたりする時とか、すごくイキイキしていますね。純粋に、そういう表情を見られることが嬉しいなって思います。

ー素敵ですね。逆に、難しいことや悩むことはありますか?
難しいことはいっぱいありますが、ざっくり言うと、親でも先生でも友達でもない、ナナメの関係でいることが大事であり、難しいなと思っています。やろうと思えば、私がこうして、ああしてみたいな感じですることもできると思うんですけど、それは全然したくなくて、一緒に走っていきたいんですよね。それから、誰かから指示されたからやるんじゃなくて、やってみたくてやってみるみたいな感覚って、これから人生を生きていく上ですごく大事な感覚だと思います。その感覚がどんどん大きくなっていったらいいなと思うので、そういう一緒に走れる関係性を築ける塩梅が難しくもあり、大事だなと。

ー「ナナメの関係」、もう少し教えてもらってもいいですか?
この人にはこういう顔を見せられて、この人にはこういう話ができて…って誰にでもあると思うんです。なので、メンターに全部を見せなきゃいけないとか、全然そんなことは思ってないんですけど、その子が見せられる顔が色々あるといいなって。友達にはしょうもない話ができて、家族とは日常生活の話ができて、メンターには悩んでいることや将来のこととか、他の人にはなかなか話せないことも話せたらいいなと考えています。私自身、中高生の時に、友達も家族もいましたけど、話せないこともたくさんあって、内に秘めていく間に忘れていったり、自分のものでないような感じになったりしていたので、どこかで表現できる場があって、誰か一人でも分かってくれるところがあるといいなと思うんです。その一部を担う存在として、ナナメの関係であれたらいいなと思っています。

ー中高生から悩み相談をされることもあるんですか?
相談というよりは、こんな気持ちになったって話をしてくれる人が多いですね。過去のことや今体験していることも、率直に「こう思ったんだ」って感じで。

ーそういう時ってどういう風に聴いているんですか?
そうですね…とにかくその子が伝えようとしてくれていることは何かなっていうのを考えながら聴いています。時には、その話を聴いてこう思ったよってことを伝えることもありますね。単にメンターと受講生っていうことじゃなくて、「私とその子」として話したくて、そういう気持ちで聴いていますね。

ーメンターと受講生ではなく、「私とその子」。
悩み相談に限った話ではないんですけど、私自身もまだすごく不完全だし、未完成だし、悩むことも多いです。だから、グイグイ引っ張るような存在でもないし、すごいアドバイスができるわけでもないけど、私としてその子が言ってくれてることすごく分かるなって思ったり、その発想はなかったなとか、純粋に感じたことをちゃんと私も感じて、その子に伝えたりとかするようにしています。メンターと受講生っていうと、ちょっと上下関係があるような感じがするけど、あんまりそういう風には思わなくて、一緒に成長していったり、分かり合えていったりできたらいいなと思っていて。そういう違いですかね。


私だけがその子のサポートをしているんじゃない

ー冒頭で、MSPの運営もしていると伺いました。実際にどんなことをしていますか?
3期MSPのスローガンが「やりがいをもって、みんなでつくる楽しい3期MSP」なんですけど、それを目標にして運営しています。例えば、秋祭りとして、中高生から社会人の中高生サポーターの方まで全員が集まれるような企画を実施したり、新しくMSP生の部活動を始めたりしています。部活は、中高生のみんながやりたいと思ったことを実際に表現できたり、リーダーや運営を体験的にやってみることができる機会だったりして、失敗してもいい環境の中で、一歩踏み出してやってみる機会になったらいいなと思っています。

ーメンターだけをやっていた時と、実際にMSP全体の運営をしている時で、見え方などに変化はありましたか?
ありましたね。メンターだけの時よりも、こんなにたくさんの人が10代に関心を持って応援しようとしてくれているっていうのを体感しながら、メンターをやっています。受講は一対一なんですけど、その背景にたくさんの人が関わってくださっていて、私だけがその子のサポートをしているっていうことではなくて、もっとたくさんの人と一緒に育てていく感覚が生まれました。
あと、中高生の時とかどんな人がこの世の中で生きているのかあんまりわからない感覚があって、ちょっと怖いなっていう印象が大人や社会全体に対してありました。でも、中高生サポーターの方々と関わらせてもらうことを通して、こんなに素敵な人がたくさんいるんだなと思って、中高生の子たちもそんな素敵な方々と出会ってほしいし、大人も中高生も一緒の空間でもっとみんなで磨かれていったらいいなという気持ちを持つようになりました。

ーなるほど。これからの運営として、もっとこんな風にしていきたいとかはありますか?
もっと「みんなでつくる」っていうのをやっていきたいなと思っています。より社会全体で相手と自分の「個性」を活かしながら、一つのものをつくっていくという体験を、GLの中で体感できるような場をつくれたらいいなと。

MSP運営の3人(ゆずきさんは右端)

ー「みんなでつくる」を本当に大事にしているんですね。どうしてですか?
運営のミーティングでも、代表のくららさん、高校生のみっちーくんと話していて「それ面白いね」「その感覚なかったな」ってお互いの思考をシェアしています。部活や秋祭りも、その過程で生まれてきたものですが、その感覚がすごく楽しいなって思うんですよね。
私自身は「みんなでつくる」ってもともとあまり得意ではなかったんです。でも一人で考えていることよりも、もっと素晴らしい、楽しいことがみんなで考えるとたくさんあるし、感情を共有できると、その感情が倍になる感覚があるなって最近実感し始めています。あと、そういうことをできる場ってなかなかないんじゃないかなと思うので、GLの中でつくれたらいいなって気持ちもありますね。

 

10代から20代へ
自分の転換期をGLで過ごせてよかった

ーボランティアとして関わり始めたきっかけや第一印象を教えてください。
きっかけは、大学のグループLINEでした。1期MSPのボランティアスタッフを募集していたんですけど、そこに「『個性』は感じたこと、考えたこと」って書いてあったんです。そのコンセプトが素敵だなと思ったのが一番大きかったですね。

ボランティア時代のMSP生とのツーショット(ゆずきさんは左)

ーコンセプトに惹かれた。もう少し教えてもらえますか?
私と個性ってすごく対局にあるなと思って、それまで生きてきていたんです、すごく平凡に生きてきていたので。勉強がすごいできるわけでもないし、運動もできないし、何か活動をしていたわけでもなくて、本当に何も個性がない人間だなと思っていました。だから、個性っていう言葉を聞くと、どこか圧迫感というか、そういう感覚を抱いていました。
でも「感じたこと、考えたこと」って聞いた時に、「あ、それだったら、私もたくさん感じたことも考えたこともあるな」って思ったし、私の隣にいる人も、その隣にいる人も、みんな個性があって、すごく素敵に見えてくるような感覚を持ちました。なんというか、大きな考え方の転換が自分の中で起こったのかなと思います。

ーボランティアから2期MSPではメンターへ。どういう気持ちでしたか?
やっぱり自分に全然自信が持てなかったので、一人の中高生の半年間を預かることなんてできるかなっていう不安と怖さはありました。でも、怖いと思いつつも、やっぱりやる意義はあると思うし、私じゃない方がいいかなって思いも最初はありましたが、それって結局GLの「個性」の定義と反していると思ったんですよね。だから、自分が感じたことや考えたことも、そのまま大事にしながらやっていったり、私だから感じられることもあるだろうと思ったりしたら、やってみようと思うようになりました。もっとも、成長したいっていう気持ちが一番あったかもしれませんが。(笑)

MSPフェスでメンターとしてコメント

ーメンターを実際にやってみてどうですか?
すごくありがたいなって思うし、自分自身の成長にもすごく繋がっていると思います。中高生の頃までは、何かしてもらうことばかりだったので、そうではなく、この子にはどんなことがいいかなって自分で考えながら人と関わるという経験が人間の幅が広がる経験ですね。

ーボランティアで関わり始めてから現在に至るまで、色んな経験を重ねながらやってこられたんですね。MSP生や中高生に向かう視点や思いで変化した部分はあったりしますか?
自分のためという感覚ではなく、誰かのためっていう感覚が強くなった気がしますね。ボランティアで関わり始めた時は「自分を変えたい」とか、自分という基準で色々行動していたし、自分が不安だから相手に対してこう振る舞ってしまうみたいなことが結構ありました。でも、中高生やメンターの仲間、中サポの皆さんと関わりながら、本当にみんな温かく受け入れてくれるから、自分自身を受け入れられたところがあると思います。それで、自分が満たされるからこそ、相手のために何かできたらいいんじゃないかと考えたりできるようになった、それは大きな変化だと感じています。

ー今日は色々なお話を聞かせてくださって、ありがとうございます。最後に、インタビューを終えて、何か感じたことや考えたことがあったら教えてください。
大学1年生から3年生まで、すごくあっという間だったんですけど、この10代から20代の自分の人生の転換期をGLの中で過ごせたということがすごくありがたいなと思いました。この環境で過ごせていなかったら、分からなかったこともたくさんあったと思うので、これまで関わってくれた中高生の子やメンターの仲間、中サポの方、本当に皆さんに感謝したいと思いました。

ーすごく嬉しいです。今日はありがとうございました。

くまちゃん

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