キャリア教育NPO法人 Grow & Leap

文科省の「基礎的・汎用的能力」から捉えた!5期My Story Project

こんにちは。松隈です。
5期 My Story Project(愛称「MSP」)には、27名の中高生が参加し、2025年8月から2026年3月まで、それぞれのペースで自分らしいキャリアデザインに取り組みました。

前回は、5期MSP生のみんなにご回答いただいた評価アンケートをもとに、MSPの様子について振り返りました(前回の記事「自分を知る」が、人生を変える ― 5期 My Story Project 評価アンケートより)。今回は数字を用いてMSPの成果を見てみたいと思います。

MSPフェスで発表する中学生

今回用いた尺度について

今回も、3期の振り返り記事と同様に、文部科学省がキャリア教育で育成すべき力だとしている「基礎的・汎用的能力」を用いてみました。

基礎的・汎用的能力は、内閣府「人間力」、経済産業省「社会人基礎力」、厚生労働省「就職基礎能力」なども踏まえながら、「分野や職種にかかわらず、社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる能力」として掲げられたものです。①人間関係形成・社会形成能力、②自己理解・自己管理能力、③課題対応能力、④キャリアプランニング能力、の4つの能力によって構成されています。(基礎的・汎用的能力について詳しくはこちら

使用した尺度は、2015年に浜銀総合研究所さんが実施した「高等学校普通科におけるキャリア教育の実践と生徒の変容の相関関係に関する調査研究」に掲載されているものです(pp.17)。
*株式会社浜銀総合研究所 (2015). 高等学校普通科におけるキャリア教育の実践と生徒の変容の相関関係に関する調査研究

この尺度を、MSP開始前の2025年8月、中間発表後の2025年11月、そしてMSPフェス後の2026年4月の計3回、5期MSP生たちに回答をお願いしました。各項目について「あてはまる(4点)」から「あてはまらない(1点)」で回答してもらいました。各指標6項目なので、最小6点・最大24点です。

キャリアプランニング能力が大きく上昇!

さて、気になる結果を見てみましょう。

全体として、すべての能力で点数が伸びています。中でも、キャリアプランニング能力は事前16.93点から事後20.00点へ、+3.17ポイントという最も大きな変化を示しました。3期(+2.95pt)と同様に、今期も大きな伸びが見られました。

またキャリアプランニング能力の伸びと、自己理解・自己管理能力の伸びの間に強い関連が見られました。自己理解・自己管理能力が大きく伸びた人ほど、キャリアプランニング能力も大きく伸びる傾向があったということです。

「自分はどんな強みがあるか」「何に心が動くか」「どんなときに力が出るか」——そういった自己理解が深まってはじめて、「自分はどう生きていきたいか」「どんな未来を描けるか」という問いに、自分の言葉で答えられるようになるのではないでしょうか。

自己理解がキャリアを描くための土台になる。

今回の数字は、そのことを示唆しているように思います。

中高生・社会人がフラットに対話する空間

前半戦:「自分を知る」が土台をつくる

MSPの前半戦は、主に自己探究に時間をかけます。メンターと一緒に、生まれてから現在に至るまでの思い出を振り返ったり、才能や性格、感情体験から自分を捉え直したりする時間を2ヶ月程度かけて積み重ねます。そして中間発表では「自分について」をテーマにプレゼンし合い、それまでの自己分析を一度言葉として整理します。

数字を見てみましょう。 中間時点(前半戦終了後)では、自己理解・自己管理能力が+0.63pt、キャリアプランニング能力が+1.40pt伸びた一方、課題対応能力は+0.48pt、人間関係形成・社会形成能力は+0.04ptにとどまりました。

前半戦でキャリアプランニング能力が+1.40ptと大きく動いているのは、社会との接点を広げる後半戦より前に、「自分を知ること」そのものが、キャリアについて考える力と深く関わっている可能性を示しています。自己分析を通じて「自分が何者か」が少しずつ見えてくることで、「自分はどう生きたいか」という問いが、中高生自身の問題として捉えられるようになっていく――そういうことが起きているのではないかと思います。

一方、課題対応能力と人間関係形成・社会形成能力の変化が前半戦では小さいことも、後半戦の変化と合わせて見るとより鮮明になります。

後半戦:動いてみることによる変化

MSPの後半戦は、自己探究の土台の上に、外の世界へ一歩踏み出すことを基本としています。5期では、デザイナーや地域創生に携わる方々など様々な領域で活躍する社会人へのインタビュー、MSP生同士や世代を超えた交流イベントの企画・実施など、多様な形で外の世界と関わる機会を設けてきました。

数字を見てみましょう。 後半戦(中間→事後)では、人間関係形成・社会形成能力が+1.34pt、課題対応能力が+1.25pt、キャリアプランニング能力が+1.67pt伸びました。前半戦でほとんど動かなかった人間関係形成・社会形成能力と課題対応能力が、後半戦で大きく伸びています。

実際に企画を動かしたり、初対面の社会人へ話を聞きに行ったりする中で、「うまくいかない」「どうすればよかったか」を繰り返し考える機会が生まれます。そのプロセスが、課題対応能力や人間関係形成・社会形成能力の向上と関わっているのかもしれません。

そしてキャリアプランニング能力は、後半戦でもさらに伸び続けていました。前半戦で自分の内側を掘り下げ、後半戦で外の世界と出会い、また自分に引き寄せて考える——その往復運動がMSPフェスに向けた準備の中で積み重なっていくのだと思います。

中高生が企画したイベントの広告画像

MSPの設計と、4つの能力の変化

ここまでの結果をまとめると、前半・後半の時系列変化と、MSPのプログラム設計の間に、一定の対応が見られました。

前半戦(自己探究フェーズ)では、自己理解・自己管理能力とキャリアプランニング能力が大きく伸びました。自分と向き合う時間が「自分を知る力」を育み、それがキャリアについて考える土台になっている可能性があります。

後半戦(アクションフェーズ)では、課題対応能力と人間関係形成・社会形成能力が大きく伸びました。実際に動き、人と関わり、試行錯誤を重ねる経験が、これらの能力の変化と関わっていることがうかがえます。

そしてキャリアプランニング能力は、前半・後半を通じて継続的に伸び続けていました。自己理解という内側への探究と、社会との接点という外側への挑戦、その両方を往復するプロセスが、「自分らしいキャリアを描く力」の形成につながっているのではないでしょうか。

MSPフェスの集合写真

最後に

今回は、文部科学省の「基礎的・汎用的能力」の視点から5期MSPについて振り返ってみました。

キャリアプランニング能力の大幅な伸びは、数字として見てもやはり嬉しいですし、それを支えた自己理解・自己管理能力との関係も、MSPの設計が正しい方向にあることを示してくれているように感じます。何より、27名一人ひとりが、自分のペースで自分らしいキャリアデザインに向き合い続けてくれたことが、この結果につながっていると思います。

3度にわたって回答してくれた5期生の皆さま、本当にありがとうございました!

くまちゃん

Grow & Leap 常務理事・MSPメンター・事務局
大学院で臨床心理学を専攻、メインテーマは自尊感情と自己価値。一人ひとりが自分と向き合う中でよりよい在り方を見つけたり、社会の中で自分らしく生きることをサポートしたりしています!
(臨床心理士 有資格)

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